VULGAR

all lyric by 京 all music and arranged by Dir en grey
紆余曲折を経てようやく完成したニューアルバム。タイトルを直訳すると“俗悪な”だとかそういう感じだが。
凄い。
鬼葬からずっと見えそうで見えなかったディルアングレイの“今”を余すところ無くパッキング。
全ての曲がヘヴィかつアグレッシヴ。なのにメロディラインが際立っている。
一曲ずつの世界観を成立させつつも、一本太い核を貫き通したアルバム。
核となる一点に向かって全ての楽曲を凝縮させたような、密度の濃さである。
ジャケット・ブックレットの異様さもなかなか素敵ではあるまいか。


□ 01.audience KILLER LOOP □

原曲 薫
アルバムの一曲目としてこれほどふさわしいナンバーはないだろうと納得させられる。
すげーな。
まさにVULGARの世界の幕開け。
京の絶叫シャウトから始まるこの曲、ヘヴィなノリのサウンドもナイス。この絶叫に心臓を鷲掴みにされ、一気に世界に引き込まれる。
何ともおぞましげなサウンドの気味悪さが徐々に広がりを見せる構成は絶品であろ。
歌詞の最後に全て疑問符がついているが、メロディがそうではないのであまり分からない。
日本語ではきちんとした疑問文の形を取っていないと分かりづらいんだね。別にいいんだけど。


□ 02.THE VD EMPIRE □

原曲 京&Die&Toshiya
跳ねるような刺すようなイントロのリフが印象的な疾走感溢れる一曲。
人をくったような京独特のラップとそれにかぶせられるシャウトの見事なこと、何だこれ。平伏です。
ライトなノリながらも、あくまでも重心低めのサウンドによって攻撃的な刺々しさが最高。
サビの絶叫シャウト、最後の叫びが心地よすぎ。ヘドバン必須。
ツインギターの絡み聴いてて気持ち良いです。
ドラムの音がもっと強ければいいのになぁ。タイトな音も嫌いじゃないが。
タイトルはそのまんま。北でもいいかもしれない。


□ 03.INCREASE BLUE □

原曲 ---
色シリーズ(?)青。歌詞読んだら青いイメージは確かにあるが。物凄い主人公の登場だ。
02からの繋がり・間隔もお見事としかいいようが。
キンキンしてない、むしろぐしゃっとしたギターリフなんだけど、刺さってくる感じ。
爆走して刺さってるんだけど何故か明るい感じ。謎。この雰囲気はディルにしか出せまい。
シンプルなリズムに耳馴染みの良いリフが乗っかり、思わず身体を動かしたくなる。グルーヴ感っての、こういうの。
実はかなり好き。


□ 04.蝕紅 □

原曲 薫
色シリーズ(?)紅。赤ではなく紅な辺りにポイントあり。タイトルからも分かるとおり和風路線である。
徹底してダーク。映画で例えるならホラー系?じめっとしてておどろおどろしく。
サビのメロは美しいほどなのに、シャウトとファルセットの混ぜ具合がイキ切ってて最高です。
むしろこの曲全体で一つのショートフィルムを見ているような感覚かもしれない。
京ヴォイスのメリハリ、歌詞のストーリー、声が持つ感情。流れがしっかりと見える。
曲を持ってきた薫の“京が何かを吐き出しながら歌う姿を思い浮かべながら作った”という言葉が顕著である。
ドラム?シーケンス?途中のブレイクで入る意味不明な音はさすがディルアングレイ。気味悪すぎる。
この曲もドラムがもっと重ければいいのにと思ってしまいました。徹底してヘヴィなギターサウンドは好きなんだが。


□ 05.砂上の唄 □

原曲 京&Die
アルバム中一番メロディアスかもしれないこの曲。多分きっと、一番ギターの本数多いのもこの曲?(素人判断)
とにかく音の厚みに圧倒されてしまう。ベースもここぞとばかりに動いている。こういうベースラインは大好き。
決してボーカルの邪魔をしているわけではなく、むしろ心地よい厚みで京ヴォイスを見事に引き立てている。
よく聴くと複数本鳴っているアコギが素敵。物悲しく、美しく、乾いた感じ。
イントロ&アウトロのメリハリの付け方が最高のかっこいい。
メロディアスと言えども、詩の重さも相俟って京ヴォイスの痛みは増すばかり。ポップにはならないんだな。
しかし高音だ。というか高低の落差が激しい非常に難しいメロディライン。さすが京。
因みにギターソロがあるが、こんなソロをソロとして成立させてしまうのもディル所以である(褒めてます)


□ 06.RED...[em] □

原曲 Die
色シリーズ(?)RED。赤でも紅でもなくRED。詩を読んだら分かるよ。
不気味なSE〜リフへの流れが絶品。サウンドの起伏が上手く効いている。うーんいいなぁ。
少しずつ音が増えていってサビへ繋がってゆく構成の隙の無さがたまらない。
サウンドもリズムも全体的に荒っぽい印象を受けるが、京のボーカルがそれを緩和している。
歌詞もそうだが、ドラマ性のある一曲。京ヴォイスの多彩なことこの上なし!でも散漫にはならない。
久々にDieのクリーントーン・ソロらしいソロが聴ける曲でもある。このソロは必聴であろ。
ラストの高音を搾り出すように歌い上げるボーカルが感情迸ってて最高。
アルバム中唯一五分を超えている曲。とはいえ05:01だが。冗長さは感じない。
しかしこの曲、雑誌を見るまでも無くDie作曲だと分かるあたりどうなんだろう。


□ 07.明日無き幸福、呼笑泣き明日 □

原曲 ---
“あすなきこうふく、こえなきあす”と読む。どうでもいいが。
がしゃがしゃと歪ギターのリフが響いているが、どこからどう聴いてもシャッフル。ディルアングレイ的シャッフルビート。
自分は勝手に中森明菜系と呼んでいる。
鋭角的に尖ったギターサウンド、細かいベース、跳ね気味のドラム、そして少し馬鹿にしたような京ヴォイス。
最高じゃねぇ?
小粋なステップでも踏みたくなる曲なのにサビではしっかりシャウトしているあたり侮れない。初聴きのインパクトは強烈。
何てったって「HUMAN GATE」だからな。キーワードは「人間」だからな。深読みすればよろし。


□ 08.MARMALADE CHAINSAW □

原曲 京&Die
ヘヴィなサウンドに乗ったメロディの美しさが絶品。このメロは京じゃなきゃ付けられないと思われる。
右へ左へ上へ下へトリッキーなボーカルは何が何だか。ハマってしまうから素晴らしいよ。
歌詞にはまた物凄く大変な男が登場してしまった。こういう逆説は京独特の言葉だからこそ楽しめる。これ、普通のバンドで書いても面白くないよ。
何だかぐるぐるしたくなるヘヴィさを持ちながらも、小ネタ効いてて面白いサウンド。ノリの良さは天下一品。
全体的にやや古めかしさを感じる。強烈なパンチを浴びせつつも繊細なケアは忘れません。
初めて聴いた時、RED...[em]と似たような匂いを感じました。


□ 09.かすみ □

原曲 薫
おそらくシングルと変わりなし。ただ、MARMALADEのディープさとRのコアでハードなサウンドに挟まれると何とも言えず良いですな。
ここに変拍子なこの曲を持ってくるとはさすがです。
やはり聴けば聴くほど味が出る、メロディの美しさもクセになって飽きない曲。
ラストのサビの前のギターは何度聴いても最高です。泣いてる京の声も最高です。
かすみいいな、かすみ。


□ 10.R TO THE CORE □

原曲 Shinya
タイトルのRは鏡文字として反転させてますが、出すの面倒なのでRでお願いします。
明るさに度肝を抜かれた。雰囲気としてはJESSICAに似ているかもしれない。
まずイントロでガッと鷲掴みにされ、そのままラストまでガーッと行ってしまう感じ。分かりにくくてすみません。
01:45というTIMEを見たときにはオノレの目を疑ったものである。遂に二分切ったかディルアングレイよ。
が、何故か短いと言う印象はまるで受けていない。むしろこのままどこまでも突っ走りたい。
ストレートかつアグレッシヴなノリ命な曲である。
わざと声を潰して何を言ってるのか分かりにくくしてあるが、この曲の歌詞はじっくりしっかり読みたいもの。


□ 11.DRAIN AWAY □

原曲 Die
10がスパッと終わり、美しいイントロから始まる。特にシングルとの差は感じられない?微妙にリマスタリングっぽい?どうよ?
全体的にメロディアスで切なげなのはいいとして、アルバムの中の一曲として聴くと更にメロが際立っていて素敵だ。
発売されたのはヴァルガから遡ること八ヶ月だが、アルバムの世界観にしっくりハマる。
ヘヴィなサウンドも然り、シンプルに歌っているようで悲しい京ヴォイス然り。
いちいちメロの転換で小ネタ挟み込んでるのが面白い。特にギターサウンドの重心の低さはたまらなく気持ちいい。
やっぱ聞き飽きない曲というのは良いです。


□ 12.NEW AGE CULTURE □

原曲 薫
イントロが今までにやったことのない手法で何だか楽しげ。
でも始まると激しく重くどこまでもヘヴィ、みたいな。
何をどうしたもんだか、パワーコーラスといい、ギターサウンドといい、たまらなく過激。
全編シャウトを貫き通している、ように聴こえる京ヴォイス。しかし実は多彩すぎるほど多彩なボーカルが複雑に絡み合っている。
なのに複雑でも散漫でもなく、やたらと耳馴染みが良い。さすがディルアングレイである。
余談だが、原曲を持ってきたのは薫と聞いて心から納得してしまった。らしすぎるな、これ。


□ 13.OBSCURE □

原曲 薫
“・・・七弦ギターの曲がねぇな”と作ってしまった薫。というわけで七弦ギターらしいです、聴いてもよく分かりません。
因みにベースも五弦のロングスケールのようで、どれだけ変則。Dieさんは普通の六弦ですが。
初回盤についていたDVDの影響もあろうが、曲だけ聴いても充分エログロの極みであろう。
やらしすぎるほどがっついたギター、低音で唸るベース、破壊的ドラム、気味悪すぎます。
そしてそこに絡む京ヴォイスはシャウトとファルセット織り交ぜの情感たっぷりな。
イントロ〜導入部はもちろんのこと、この曲が持つ“全て”がとにかく重く深く痛い。一言で言えばカオス。
とにかくこの世界を感じろ!としか言えない。聴けば分かる説得力を持った曲。
OBSCUREというタイトルは象徴的だが、その先に見える色は紛れも無く闇色だと勝手に思っている。闇だろ、黒じゃなくて。
歌詞は比喩だらけで大変解読に苦労いたします。誰か蜘蛛の意味教えてください。


□ 14.CHILD PREY □

原曲 薫
シングル曲ではあるが、タイトル表記が全て大文字になっている。よく聴くとアレンジが変わってるじゃねぇか!
というわけで新生チャイプレです。
何が変わったとは素人の自分にはよく分からないが、感覚的には確かに変わっている。
シングルよりもアルバムの方がスピーカーがビリビリしてるような感じ。疾走感もこっちのが断然。終幕へ向かって一直線。
気持ちよすぎる。パワーコーラス最高。


□ 15.AMBER □

原曲 薫
アルバムの最後を飾るに相応しい、美しくも悲しいメロディが際立つ一曲。
色シリーズ(?)AMBER。琥珀。何色よりも深い、悲しみの色である。
ミディアムテンポであり、ダークな悲しさと切ない優しさを併せ持ったサウンドは聞き込むほどに心に染み入る。
非常に美しいメロディを歌い上げる京ヴォイスは、優しい。そして痛い。
特に一番と二番のサビの温度差は絶品である。こんなことまでやってのけるのか、京という男は。
とても分かりやすい歌詞であるが、それだけに痛々しさが助長され、何とも言えず心に突き刺さってくる。
サウンドと言い、歌詞と言い、声と言い、全てが聞き手を深く抉り、同時に癒すような曲。意味分からんな。
ちょっと好きな曲すぎて自分でもまとめようがなくなってきた(駄目)
声と歌詞が持つ痛みと、サウンドが持つ優しさが美しく絡み合って最高の一曲に仕上がってるってことです。
OBSCUREを作った人間が書いた曲だとは思えない。や、他意はありませぬ。
とにかく最高の一曲。


2005.11 文責:管理人 BACK